昨日中尾勘ニさんに会った時に、「坪川君の映画見た?」と聞かれ、観てないですと言ったら、その映画の話になり、観たくなって岩波ホールに観に行きました。
坪川拓史監督の「モルエラニの霧の中」という映画です。
坪川監督とは何度かお会いしたことがあり、初めて会った時に、映画監督とは知らずに話していたのですが、確か北海道の空き家が雪の重さで次々潰れていくというよう話をされていて、それが映像が浮かぶ様な語り口で、面白い不思議な話をする人だなぁと思った記憶があります。後に映画を撮る方だと知り得心しました。最後にお目にかかったのは10年ほど前でしょうか。
久しぶりの映画館で浮かれていたのか、半蔵門線に乗り換えた途端、いつもの癖で渋谷(シネマヴェーラ)に向かってしまい、いけねぇ!今日は神保町じゃねえかと乗り換え検索をしたところ到着が上映6分前。走るのは吝かではないが、駅から近い岩波とはいえ、微妙。もしかしたら、予告があるかもと思い映画館に電話すると「今日は監督が上京されているので、挨拶が10分程あります。」との事。上京ありがとう!と思いながら、岩波へ。
受付で財布を開けたら千円札1枚しか入ってない。ガガーンとなりながら、カードは…?と聞くとPayPayならというのでPayPay残高を確認すると2450円、おっしゃー!足りる足りる!PayPayありがとう!と本日二度目の感謝を胸に場内へ。
登壇された監督は記憶より、歳をとられていて、どっしりとされていて、ああ、ということは私も歳をとったんだなぁと感慨深い気持ちになりました。
モルエラニというのはアイヌ語で「小さな坂道をおりた所」で監督の故郷である室蘭の語源とも言われているそうです。
いろいろな人の思いや人生が室蘭という土地で交錯する映画。
映画は俳優さんと室蘭の人たちが一緒に出演されていて、ドキュメンタリーの様な所と、とても映画的な所が混ざり合ったような、現実がフィクションと重なるような、自分の中の記憶と映画が重なるような、夢の中にいるような、不思議な気持ちになりました。
若い頃は人や自分の愛した物や風景がなくなるという事がただただ悲しいというだけでしたが、年を重ねてくると、悲しさにかわりはないですが、いなくなってもいなくならない、という思いがどこかにあり、そういうことを思い起こさせる映画でした。
室蘭の風景がとっても良かった。水族館とか、丸い校舎とか。
美しい話ですが、「良い話」にしていない所がいいなと思いました。
港を見に行く夫婦の話、蒸気機関車の話、最後の桜の木の話が特に印象的。
小松政夫さんが素晴らしかった。泣けました。
蒸気機関車の中のシーンも好きでした。
ラストシーンがとても美しかった。
香川京子さんが、とってもとっても美しかった!春そのものといった存在で。香川京子さんがいなかったら、映画の印象がかなり違ったと思います。
神保町の岩波ホールで4月12日まで上映中です。
214分という長さですが、長くなければならない理由があるのだと思います。
ご興味ありましたら、ぜひ。
